5日目 :
2006年12月13日(水)天気:
イギリスにはいくつものフットパスと呼ばれる遊歩道があるが、このコッツウォルズ地方にも人気のルートがある。ロウアー・スローターとアッパー・スローターを往復するルートがその一つだ。滞在のボートン・オン・ザ・ウォーターからロウアー・スローターまでもフットパスが整備されていて、25~30分で行けるというので、朝食後行ってみることにした。9時半にホテルを出発、教会の脇の道を北上し、学校を左手に小道を進む。ステーション・ロードという車道に出ると左折し、A429という幹線道路に出る。これを渡るとフットパスがあるはずなのだが、なんの表示もない...。羊がいる牧草地の中に辛うじて道と言えるような一本道が見えたので、恐る恐る近づいてみると、遠くに人影が見えた。一安心で歩き始めた。それにしても見渡す限り緑。前方には道の左右にうっそうとした森が広がっている。近づいてきた散歩中のご夫婦に『女一人で行っても大丈夫...?』と聞いてみると、『No Problem!!』と満面の笑みを返してくれた。ところどころ柵があるだけで道はずっと真っ直ぐ。ぬかるんでいるところもあるが、スニーカーであれば問題ない。平坦な道を30分進んだところで、小川の流れにぶつかった。その奥に車道が見える。ロウアー・スローター到着だ!
大きなホテルが2軒、聖メアリ教会、道なりに進むとガイドブックにも載っている水車小屋とミルショップ。中世の趣そのままに時が止まっているみたい。道を歩いているのは私一人だ。アッパー・スロータには有名なマナーハウスであるローズ・オブ・ザ・マナーがあるというので行ってみたかったが、往復するとさらに1時間半かかるため断念して、ボートン・オン・ザ・ウォーターに引き返すことにした。帰りも同じ30分。今日は風が強く、寒さに涙を流しながらのウォーキングだったけれど、このフットパス歩きはいい経験になった。自分の足で村から村へ移動するというのは達成感があったし、自然を肌で感じることができた。(ボートン・オン・ザ・ウォーター⇔ロウアー・スローターの距離は普段運動不足な方にも適度な距離なのでお勧めです。)
さて、ボートン・オン・ザ・ウォーターに戻り、ホテルをチェックアウトした後、855の路線バスでストウ・オン・ザ・ウォルドへ向かう。11時5分、バスは定刻通りやってきた。愛すべきボートン・オン・ザ・ウォーターを後にし、アンティークショップの村ストウ・オン・ザ・ウォルドへ。
10分ほどで到着し、早速観光案内所で周辺の見所を尋ねたところ、教会、ロイヤリスト・ホテル(イギリス最古のインとしてギネスブックに載っている)くらいとのこと...。荷物を預かってもらえるところがないので、キャリーバックをごろごろ引きずりながら散策することになってしまった。ストウ・オン・ザ・ウォルドはコッツウォルズ地方で一番標高が高いそうで、バス停のあるザ・スクエアからなだらかな坂を下っていくと、そのまた下方に牧草地が広がっているのが見えた。確かにこれといって観光スポットはないが、特筆すべきはそのアンティークショップの数だ。シープストリート周辺だけでも50近くの店があるそう。ふらっと立ち寄ったティールームでもアンティークの食器を利用しており、優雅な気持ちで紅茶を頂いた。
今日は、チッピング・カムデンという村に宿泊するため、ストウ・オン・ザ・ウォルドからはモートン・イン・マーシュという街を経由しなければならない。このモートン・イン・マーシュ行きのバス出発は12時45分。従って、ストウ・オン・ザ・ウォルド滞在は約1時間半だったわけだが、ざっと村をを見て回るには十分だった気がする。
バスに揺られること10分。体格のいいおばちゃん運転手の睨みにビクビクしながらバスを降りる。モートン・イン・マーシュには鉄道駅もあり、コッツウォルズ観光の拠点になる街とのことだが、バス停周辺はお店が並んでいるくらいで特に見るところもなく、ベンチに座って行きかう人々を眺めながら次のバスを待った。定刻通り、M21のバスがやって来た。チッピング・カムデンまでは30分ほど。途中、いくつかの村を通り過ぎた。どの村も石造りのかわいらしい佇まい。ひとつ村を抜けるとまた緑の牧草地が広がり、見飽きることはない。
チッピング・カムデンは12世紀羊毛産業で発達した村で、今も尚中世の面影を色濃く残している。なるほど、今まで訪れたどの村より建物が古い様子。「はちみつ色」も濃い気がする。しかし、そんな外観とは逆に、窓越しに見る一般のお宅やレストラン、土産屋などのおしゃれで近代的な内装が印象的だった。目抜き通りのハイストリートにはレストラン(パブ)の上階がB&Bになっているインが多く見られる。今日私が泊まる「キングス・アームズ・ホテル」もその一つ。客室に通されてびっくり!B&Bと聞いていたのに、私一人では寂しさが身に染みる広さで、中央に3人くらい寝転べそうな、しかも胸の高さまである大きなベッドに目が釘付けになった。ロンドンで泊まったホテルより宿泊費はリーズナブルなのになぁ。やっぱり田舎は良心的。スタッフがフレンドリーで親切なのも一人旅には嬉しかった。
恒例の観光案内所での情報収集によると、シープストリートという通りを下っていくと、絵葉書にあるような萱葺き屋根のお宅が何軒かあるという。また、ハイストリート沿いにある建物はすべて、建築上の観点から言っても必見ポイントだそうだ。
毎度のことながら16時にはすっかり日が落ち、チッピング・カムデンもきらびやかなクリスマスイルミネーションの光に包まれた。ホテルのレストランではクリスマスパーティーが行われていて、とても賑やかな夜だった。